1万5千円でも納得の高品質『鎌倉シャツ』はなぜ4,900円で売れるのか?

ビジネスマン、ビジネスウーマンの必須アイテムといえば、シャツ。百貨店で売っているような高級シャツが、驚くべき低価格で購入できる鎌倉シャツ。その高品質なシャツは、日本のビジネス層だけでなく、世界中にも熱狂的なファンを増やし、メイドインジャパンブランドの価値を上げ続けています。
その鎌倉シャツがいかにして、高品質でありながら、低価格を実現できているのか?その秘密を丸木伊参氏著書『鎌倉シャツ 魂のものづくり』から探ってみます。
まとめる書籍
鎌倉シャツ 魂のものづくり
著者:丸木 伊参 (日本経済新聞出版社)
なぜ高品質綿100%の国産シャツが4900円でつくれるのか。ファストファッションに席巻されるアパレル業界の中で、快進撃を続けるメーカーズシャツ鎌倉(鎌倉シャツ)。アパレル業界を知り尽くす…

なぜ、鎌倉シャツが注目されるのか

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メーカーズシャツ鎌倉(以下、鎌倉シャツ)は、製造から販売まで単一の業者が行うSPA(製造型小売)であり、上質なシャツを低価格で継続して販売するアパレル企業。
鎌倉シャツの高品質で低価格の品質は折り紙つきだ。しなやかで着心地の良い高級綿素材生地を使用し、創業以来、高品質のシャツ一枚4,900円(税抜き)という廉価にて販売している。
そのていねいな縫製による仕上がりは、市価1万2000円〜1万5000円の商品に匹敵するクオリティを誇る。

その勢いは国内だけにとどまらず、ニューヨークでの展開も実現させ、アパレル業界で圧倒的な評価と注目を集めている。

鎌倉シャツはなぜこれほどの注目を集めているのか。
主な理由を挙げれば、いかに集約される。

①1993年の創業以来、同業プロも認める上質なシャツを、4900円という低価格で売り続け、着実な成長を遂げている。
②「命をかけて作り、命をかけて売る」のマーチャンダイジング政策のもと、究極のSPA(生産機能をもったアパレル点)を目指し、世界に向けて国産の鎌倉シャツブランドを400万枚輸出する計画である。
③取引は「支払いは現金、リスクは100%持つ」を貫き、唯一無二といえるビジネスモデルを構築している。


なぜ、4900円が実現できるのか

ホンビュー編集部

低価格の要因は、流通ルートが縫製工場直結であることだ。
鎌倉シャツの流通ルートは、短くシンプルである。

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図表にある「SMR」とは、サダ・マーチャンダイジングリプリゼンタティブの略で、鎌倉シャツの商品企画・開発や生産管理などを受け持つ。
スタッフは35名の別会社だが、鎌倉シャツとは表裏一体。本社オフィスでは両者のスタッフが同一フロアで顔を付き合わあわせ、業務に取り組んでるという。そのため、別法人であるという組織の壁を感じさせず、コミュニケーションもよく、情報が共有されている。

それは生地メーカーと縫製工場を含めた各流通段階にもいえること。この流通段階の情報共有とコミュニケーションのよさが臨機応変なマーチャンダイズを可能にし、ロス減少にも繋がっているそうだ。

さらに主要取引先は生地メーカーで2社、縫製工場で3〜4社に絞られていて、大量発注による、上質廉価マーチャンダイズの仕組みが作られている。

これに対して、一般アパレルの流通ルートは、総合商社や問屋を経由するため長くなり、コストも嵩む。繊維製品の流通は複雑で、これ以外にも種々のルートが存在し、仲介業者が多くなれば、それだけ非効率の温床となる。

鎌倉シャツは流通ルートを簡素化し、取引先を絞った究極のSPAを構築することで、返品をなくし、高品質、低価格を実現させているのである。


高回転率の秘密

itmedia.co.jp

鎌倉シャツの原価率をは59%と、飛び抜けて高い。普通、こんな高い原価率では経営が成立しない。アパレルメーカーの原価率は20%以下、平均すれば17%から18%と言われる。

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鎌倉シャツがこの原価率でも経営可能なのは、高い商品回転率にある。回転率はメンズが、0.8回転、レディースが1.2回転と高く、消化率はなんと99%という高さ。ほぼ全品を売り切ってしまう計算になる。しかも、バーゲンセール一切なしであるそうだ。

この高回転率の要因は、短サイクルのマーチャンダイズ。
転倒の単品POSデータに基づき、SMRが企画、生産、管理を実施、商品投入計画を立てる。
マーチャンダイズは週単位がベース。アイテムごとに、いつ、何を、どの店に、何枚投入するかを決める。マーチャンダイズの基本は、「売る数と作る数がイコールであること」だという。

供給側の勇気とは、注文や問い合わせがあるからといって、品揃えをヨコに広げないことです。マーチャンダイジングの基本は絞る、勇気を持って絞ること。それが量につながり、安く提供できる仕組みをつくる

メーカーズシャツ鎌倉株式会社 貞松会長


「俺のイタリアン」との共通点

livedoor.jp

俺のイタリアンの原価率は55%(推定)で、一般レストランの倍近い数値になる。ちなみに鎌倉シャツの原価率は59%。業種が異なるために一概には比較できないが、55%から59%という原価率は、良心的商いの証明である。

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なぜ、ここで「俺のイタリアン」を紹介したかといえば、業種こそ違え、鎌倉シャツとの共通点が多いからである。
ビジネスモデルでいえば、

・良品廉価
・高い原価率
・高い客回転率
・高いリピート率
・高い志

などである。
これらは業種・業態を乗り越え絶対条件。

もちろん高い原価をかけても、収益を上げ続けなければ事業は継続できない。
両社ともその一点に全力で知恵を絞り、高い回転率を達成しているからこそ、利益を上げながらも、顧客に価値を還元し続けているのだろう。


鎌倉シャツの創業は1993年。1号店は神奈川・鎌倉の繁華街から外れたコンビニの2階で、売り上げはゼロの日もある最悪のスタートだった。そこからいかにしてグローバル企業へ成長したのか。その秘訣を知ることができる一冊。

紹介した書籍:鎌倉シャツ 魂のものづくり





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