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情熱大陸プロデューサーから学ぶ「情熱の伝え方」とは?

誰もが知っている名物番組「情熱大陸」。テレビ番組の中でも「最も独自ブランドを築いている番組」であると言えるでしょう。
そんな情熱大陸を世の中に送り出し続けている「名プロデューサー」がどのように仕事に対して情熱を傾けているのか。
その考え方を覗ける一冊のご紹介です。
まとめる書籍
情熱の伝え方
情熱の伝え方
著者:福岡 元啓 < 双葉社 >
“補欠入社"で30代半ばには“窓際寸前"までになった著者が、もがきながら身につけてきた、仕事で「本当に必要なこと」を綴った一冊。

「情熱大陸流仕事術」非効率が成果を生む

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「情熱大陸」の放送は毎週日曜日。
番組出演者を決定する段階では「制作会社からのプレゼン」「取材者本人からの売り込み」「プロデューサーが興味のある人を調査」を通して出演依頼をし、企画は、常に20本ほど走っているようです。

そんな同時並行を進めながら、VTRの編集が完成するのはだいたい"2日前の金曜日"で、ナレーションを録るのはなんと"放送前日の土曜日"なんだそうです。ギリギリになるまでやって、すぐに次の週がやってくる・・・という感じなんだとか。

最後の最後まで、なくてはならない映像、より良い映像を撮ろうとすることが、最後のギリギリの状況に繋がってしまっているそうです。

きっかけになったのは、2011年1月30日に放送した「サッカー日本代表の香川真司選手」の回。密着は前の年から始めていて、放送前日の1月29日がちょうどアジアカップの決勝戦。日本が決勝進出した場合「試合結果くらいはテロップを入れて放送しよう」その程度の心づもりだったそうです。

そして、迎えたアジアカップ準決勝。
「日本は見事韓国を破り決勝進出決定!」となったのですが、当時の香川選手はこの試合で骨折してしまったのです。

こうなったのが、放送まで、あと4日のタイミング。決勝進出するのに「主人公がピッチにいない」なおかつ「骨折してしまった・・・」。これでは準備していた通りに、テロップで試合結果を入れるだけでは成り立ちません。それどころか番組全体の編集も大幅変更しないといけません。

骨折というネガティブな状況で、香川選手にアプローチするのも憚られるなか、直前に取材するにしても「今彼がどこにいるのか?」わからない状況でした。

しかし、しばらくすると「放送前日の夜に香川選手が治療のために帰国する」という情報をキャッチ。「なんとか帰国時の映像を編集に入れたい」と考えたそうです。

とはいえ、帰国は放送前日。帰国当日の映像をどこに入れるかを想定しながら、帰国当日に「映像が取れるか保証がない」なか、虫食い状態で全体の編集をやり直し。

さらに、情熱大陸は"東京"で編集しているのですが、放送は"大阪の毎日放送"なので、テープを東京で完成させたあと、「大阪に持って行かなければ放送出来ない」状況。そのため、ナレーターには当日午前3時に収録してもらうという異例の事態になったそうです。

その取材結果はというと「帰国シーンを捉え、さらにホテルで独占インタビューに成功」することができました。

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浮かない表情の香川選手。
インタビューを始めると、そのタイミングで彼に三浦カズさんから携帯にメールが届くのです。
数々のピンチを乗り越えてきた大先輩からのエール。
そして、香川選手は、冷静に自分を分析し、再起を誓う回となりました。


ピンチはチャンス。
想定外のことが起きて、いろんな可能性がなくなった時こそ「自分がどうしたらいいのか」教えてくれるもの。
一見、非効率に思える作業でも、効率重視で行う作業より大きな成果を生むことがある」と教えてくれます。


「情熱大陸流仕事術」仕事内容を考える前にデッドラインを決める

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情熱大陸は、取り上げる人も、ジャンルも様々・・・取材期間も「1週間程度から2年以上」になるそうです。

では、どうやってベストな放送日を決めているかというと、それは、今、世間が見たいものであるかということ。
放送すべき日までに、完全に納得できるよい映像が撮れるかどうか確証がないときでも、まず「放送日=デッドライン」を決定してしまうそうです。

著者が大事にしていることが、セカンドベスト理論。セカンドベストとは「最善ではないが、その次の良策を目指す」ということ。

いつも必ず理想的な100%、ベストの製作ができているとは限りません。締切までの"時間と条件"で、一番いい落としどころを探り、前に進んでいかなくてはいけません。

具体的にこの理論を実践したのが「片岡愛之助さん」の回。
当時、片岡愛之助さんは半沢直樹で大ブレークしており「今視聴者が見たいのはこの人だ!」と思い、急遽取材を始めたそうです。
そして放送日をドラマ終了の翌週に設定。「愛之助さんを一番見たいのはいつだろう」という考えから導き出した判断です。

設定した放送日まで、1ヶ月しか密着期間はなかったため、「長期間密着してできること」は捨て、「短期密着でみせることを重視した演出」を考えたそうです。
もちろん、デッドラインが短いからといって、決して薄い内容にはしません。最もニーズがある時期にデッドラインを絞り、最高のパフォーマンスを出すために最善の方法を探し出す。

「理想を追求しすぎても、いつまで経ってもベストな状態が来ないことも多い」といいます。
長期と短期の利点を把握した上で、短期勝負で、デッドラインを決めたときには「セカンドベストを目指す」という考えを持つことが重要です。


「情熱大陸流仕事術」逆転の発想

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今は名物番組のプロデューサーとなった著者ですが、35歳の時に危機に直面します。出向先の制作会社で作っていた番組が打ち切りになり、制作チームが解散、MBSの本社に戻ってからは、窓際の危機に・・・。当時は転職サイトを片っ端からチェックすることもあったそうです。

様々な特番の企画を提出をしても、ことごとくボツになる。そんな日々を経験しながら、「本当にやりたいこと」を追求し、企画した番組が大変な反響を呼ぶことになりました。

それは「ゴールデン枠での死刑特番」
テレビ界の常識では、民法のゴールデンの時間帯で死刑特番なんてありえないこと。スポンサーも付きづらい内容で、たとえ編集しても「人の生死に関わるリアルな問題で、出演者の失言も怖い」といった問題があるからだそうです。
上層部や各方面からありえない「やめたほうがいい」という反対意見がでました。
しかし著者は「失うものはない状態だったため、なんとか話し合いを重ねて、放送にこぎつけることができた」と言っています。
そして「ゴールデン枠での死刑特番」は大きな反響を呼び、著者は一躍注目を集めるようになったそうです。

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そこから得たヒントを元に「情熱大陸」でもデリケートなタイミングで放送をした内容がありました。
2012年8月10日に韓国大統領の李明博が竹島に上陸して以降、日韓関係が冷え込んでいた時、各局が"韓流タレント"の起用に対して自粛ムードで、どこも取り上げていない状況でした。

そのタイミングで、韓流アイドルグループ「少女時代」を情熱大陸で取り上げた内容を放送したそうです。
放送の中で、「日韓関係についての質問に、アイドルグループが回答する」という大変めずらしいシーンが放送されました。どうなるかというヒヤヒヤはあったそうですが、腹をくくってやってみると、結果的に好意的な評価を受け、大きな反響を得ることができたそうです。

「新しいことをしようと思ったら風が吹くのは当たり前。その風を、向かい風と思うか、心地良いそよ風と思うか、自分次第」だと言います。


「情熱大陸流仕事術」いつも忘れてはいけないもの

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そんな結果を出し続けている著者ですが「情熱大陸」のプロデューサーに着任してすぐに「田原総一朗さん」に密着取材しようと決めたそうです。田原総一朗さんといえば、テレビ東京の元ディレクターで、伝統や常識をぶち壊すようなドキュメンタリー番組を数多く作ってきた、いわば「ジャーナリスト界の巨人」。

そんな密着相手に対して「目立った取材方法をしたい」と考えたそうです。
通常の取材は、対象者に密着するディレクターが1人ですが、「男女の視線で田原さんを撮影した方が面白くなるのでは?」ということで"1週間連続で夫婦ディレクター2人組"で密着させてそうです。

変則的に面白い取材になるんじゃないかと「どや顔」になっていた著者でしたが、2日目にして田原さんからダメ出しが・・・
「2人が取材を担当するなんて、信じられない。こんなの密着じゃない。密着っていうのは、取材対象と心中するくらいの覚悟がいるもんだ。それで結局、何を撮りたいんだ!?」
と一喝されたそうです。

これで著者は目が覚めたといいます。
ドキュメンタリーは小手先のテクニックじゃなくて、田原さんが言うように「対象者にどれだけ真摯に向き合って、何を撮りたいのかがベースにあるべきだ」ということに気づいたそうです。

今の情熱大陸があるのは「根底にこの考えが根付いている」のかもしれません。
テクニックに頼らずに常に本質とは何かを考えろ」と。


「毎日放送」に追加募集で滑り込み、30代半ばには窓際寸前にまでなった著者が、もがきながら身につけたきた仕事のやり方。そしていま、『情熱大陸』のプロデューサーとして日々学んでいる“一流の人”たちのビジネスマインドの数々。
「仕事に対する考え方」で様々なヒントを得ることができる素晴らしい一冊です。

紹介した書籍
情熱の伝え方
情熱の伝え方
著者:福岡 元啓 < 双葉社 >
販売価格を見る    Kindle版あり

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