医療保険に入るより貯金の方が得?意外に知らない保険に関するお金の話

保険料は毎月コツコツ払い続けているうちに、気がつけば結構な金額を支払っているもの。
もしもの病気で1ヶ月入院したとしても、払い続けた保険料の”元を取る”ことは難しいかもしれません。
「テレビCM」や「一般常識」に流されないように、医療保険の正しい情報を学びましょう。

まとめる書籍

「一生安心」にだまされるな! 医療保険はすぐやめなさい
「一生安心」にだまされるな! 医療保険はすぐやめなさい
著者:内藤 眞弓 (ダイヤモンド社)
30代でも定年後でも医療保険は必要ナシ!医療保険で200万円もらうには、手術を10回、入院を100日…


民間保険って不要なの?日本の公的医療保険は素晴らしい!

irorio.jp

「民間の医療保険に頼らずとも、日本の”公的医療保険”である”健康保険”は世界に誇れる制度」だと著者は言います。
健康保険に加入している限り、手術や入院費で100万円かかっても実際の負担は9万円足らず。70歳以上になれば、負担は約4万5000円です。

しかし、病気が多くなるシニア世代では、安心のために「どうしても民間の医療保険に入りたい」と思う人が多くいます。
さらに若い世代でも、老後の”病気”や”長期入院”を心配し、多くの人が医療保険に加入して備えようとしています。
確かに、日本人の寿命のは長く、2012年の日本人の平均寿命は「女性86.41歳」「男性79.94歳」と、定年後20年、30年生活の蓄えをしてなくてはなりません。

しかし、「自分がいつまでも元気なのか誰にも分かりません」し、「数十年後の家族の状況やお金のこと」など、それこそ「一生安心」など言い切ってもいいものでしょうか?

老後に“自分が望む暮らしを実現させる”のは保険だけでは限界があります。
国や自治体の制度の活用、”いざ”という時に頼れる家族や友人、そして体力が衰えたり、多少の病を抱えながらでも満足して暮らせるよう「生活の質を上げるためのお金の準備」など、老後に備えて用意すべきこと、知っておくべきことを多くあります。それなのに”医療保険”のように「入院しなければ貰えない保険金」のために、大事なお金を払い続けていては、将来、後悔してしまうことにもなりかねません。

本書で伝えたいことは「150万円のお金があれば、すぐに保険をやめよう」「60歳を超えたら医療保険をやめよう」と言うことです。
実際にその年代である60歳、70歳を過ぎた人達をを見てみると「民間の医療保険が必ずしも役に立っている」とは言えないようです。それなのに、多くの人が「妄信的に毎月多額の保険料」を払っています。医療保険は、老後の不安を取り除いてくれる”万能薬”ではありません。シニア世代は生命保険とセットで毎月2〜3万円、ご夫婦で5万円近くを支払っている方も多いです。

入院しなければもらえない保険にお金をかけるのは勿体ない」と本書では主張していますが、それでは「なぜそのようなことが言えるのか?」について、次項から見ていきます。


ずっと元気だと保険料は損?「高額療養費」でそんなに安くなるの!?

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それではここで、実際の例を挙げましょう。

70歳になるおばあちゃんが、ある日階段からの転倒で骨折し、手術を行いました。
その後、26日間入院して、医者や看護婦、理学療法士など、その道のプロの方に面倒を診てもらいました。
おばあちゃんは「いくらかかるんだろう・・・」とドキドキしていましたが、金額を聞いて腰を抜かしたといいます。

会計の窓口で支払った金額はなんと6万7800円・・・。

以前から「入院したら大変」ということで、入院保障がついた生命保険に加入していました。
今回「入院給付金13万円(1日5,000円×26日分)」と「手術給付金5万円」の合計18万円を受け取りました。

病院に支払った金額よりは多く貰えましたが、おばあちゃんが「毎月1万円ずつ払い続けてきた保険料の総額」が30年で360万円にもなるため、ちょっと”複雑な心境”になったようです・・・

会計の際の明細書を見ると「入院中の食費が2万3,400円、それとは別に医療費の自己負担は19万円ちょっと」
しかし、公的な健康保険には、医療費が高額になったときの救済措置「高額療養費があるため、70歳以上のおばあちゃんは1ヶ月あたりの医療費は4万4400円が上限です。
つまり、実際に払った金額は「4万4000円+食事代」で、26日間入院しても総額が6万7,800円でした。

※高額療養費制度は70歳未満の場合、所得区分が「一般」の方で自己負担は8万7430円です。

保険は払い損の人が多いから成り立つ仕組みです。
“貰う額”よりも、”支払う額”が多い人達が多ければ多いほど、保険会社も儲かります。
イザというときには、民間の医療保険の保険金よりも「家族」「友人」「ご近所さん」「公的保障」の方が頼りになるものです。


知っておきたい!がん治療費はお金がこれだけかかる

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「がんの治療費の目安」を知れば、”やみくも”に保険に頼らなくても済みます。

「がん治療はお金がかかる!」漠然とそう思っている人が多いのではないでしょうか?
まず、ここでは「がんの治療費」について詳しくみていきましょう。

「がんの治療」にかかる費用は、“早期がん”、なのか“進行がん”なのかによって異なります。
早期がんといえば、がんが発生してから”時間が経過していないがん”というイメージですが、実際は進行を推定するのは難しく「がんの広がりがどの程度か」を顕微鏡で観察して判断します。”早期がん”には「治療によって完治できるがん」との概念も含まれているそうです。

早期がんの場合には、最初の年には50万円程度の治療費がかかります。
「根治を目指す治療」がうまくいけば、治療スケジュールが立てられますので、治療費の予想ができます。

早期がんの治療で最もお金がかかるのが「周術期」です。
「周術期」とは、入院、麻酔、手術、回復といった一連の期間のこと。
「高額療養費の適用」となることが一般的で、手術をした月の医療費の自己負担は、所得区分一般の人が約8万円、上位所得者が約15万円です。

退院後も「抗癌剤治療」や「定期検査」が続くことが多く、「治療が始まった年の医療費自己負担は50万円程度かかる」と思っておいた方が良さそうです。”再発”しなければ、「抗がん剤治療の終了」とともに「定期検査のみ」となり、2年目以降は年間5万円から7万円程度になるそうです。

その後、”再発”すると、初回のがんと同様に「手術や放射線治療」を行い、それから「抗がん剤治療」が行われます。それが”不可能なケース”では”進行がん”ととらえ、「効果のありそうな薬」を適宜試していくため、その都度費用を確認していく対応となります。部位によっても治療法が違うので進行がんの治療の予想は困難です。

ただし、公的医療保険が効く範囲であれば、高額療養費制度が適用となりますので、月々の医療費は、高額医療費に該当する手前の「7万円程度の負担」が続くことになります。


保険に入るくらいなら、万が一に備え「最低限の貯金」を!

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保険は「契約者と保険会社の間で交わす契約」です。困ったときにお金が出てくる”打ち出の小槌”ではありません。
「人間は合理性だけは生きられないので、心の安定が得られるのであれば、医療保険に加入すればよい」と著者は言います。
ただし、「保険は契約であること、限界があるもの」だと理解した上で、という条件付きとのことです。

毎月5,000円でも「10年で60万円」「20年で120万円」と、積み重なると結構な金額になります。
実際に保険金として120万円もらうには「手術を6回(手術給付金10万円の場合)、さらに入院を60日間(日額1万円の場合)」しないと受け取れません。

もちろん、これ以上の「手術や入院」をして、払った金額以上に”受け取れる可能性”もありますが、そもそも保険は”万が一のときの資金不足”に備えるもの。「公的な健康保険」があり、「高額療養費制度」もあるのですから、”入院の備えを保険に集中させる”のはやめましょう。

本書では「その分を貯金に回すこと」を推奨しています。
入院するかどうかわからない”不確実な未来”において、貯金は「損しない、手続きも要らない、使徒自由の万能の保険」です。


いかがでしょうか?
日本で暮らしている限り、高額な医療費はかからないと言えるかもしれませんね。
紹介した本書は「医療保険はすぐにやめなさい」というタイトルですが、著者は13年間大手生命保険にて勤務し、ファイナンシャルプランナーとして独立されている方。
本書の中でも、中立な立場にたって「どうしても入りたいならこの保険!」ということで「オススメの保険」も紹介されています。「大人になったらとりあえず保険に入るもの」と漠然と考えている方は、決して読んで損はない良書です。




紹介した書籍

「一生安心」にだまされるな! 医療保険はすぐやめなさい
「一生安心」にだまされるな! 医療保険はすぐやめなさい
著者:内藤 眞弓 (ダイヤモンド社)

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   Kindle版あり

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