“桃の天然水””充実野菜”を生み出したプロが教える1億人を動かす「潜在ニーズ」の掴み方
ヒット商品を生み出す正体は、そこにあります。(「ヒットの正体」はじめにより)
著者:山本 康博 (日本実業出版社)
充実野菜、リアルゴールド缶、ルーツ…みんなが知ってるアノ商品の仕掛人が秘訣を大公開!
潜在ニーズこそヒットを生むカギ
ヒットの成否を分けるものとは、いったい何なのでしょうか?じつは、あらゆるヒット商品の根源には共通している、「ヒットの正体」があります。
それが潜在ニーズです。(10ページ)
モノも情報も過剰気味のこの時代、そもそも市場には必要なものがほとんど満たされていると著者はいいます。そこで重要なのが「潜在ニーズ」。
つまり、ニーズが顕在化していない状態。
本人でさえ自覚できていなかったところに、ポンと正解をもたらしてくれるようなもの。しっくりと腑に落ちるようなものこそ、ヒットを生み出す条件だといえるそうです。
人の心をつかむのに重要な条件
人の潜在ニーズを掴むために何よりも大事だと考えていることは、「人を喜ばせたい!という気持ち」を持っているかどうか、だと著者はいいます。
パソコンの前に座ってデータを見つめたり、ちょっとした調査をしたり、グーグルで検索しただけでは、潜在ニーズは見えてきません。なぜなら、『潜在ニーズとは人の心』だからです。
さらには、人と向き合うだけでなく、相手の心の中にまで侵入して、喜びのポイントを見つけ出そうという姿勢が大事になります。(59ページ)
ヒット商品を生み出す「潜在ニーズ」を知るということは、要するに「人を喜ばせることが好きかどうか」。
「人を喜ばせる」というシンプルで究極の目標をいつも芯に据えておくことは、思っている以上に難しいと著者はいいます。
市場調査、顕在ニーズではヒットは生まれない
「ヒットの正体」P70より
市場調査によって潜在ニーズを発見する可能性は、ほぼゼロと断言してもよいでしょう。
(64ページ)
市場調査はあくまで、回答に参加した商品車の顕在意識に基づくニーズの調査。そのため、ここから本当にヒットの元となるデータは出てこないそうです。
一方、潜在ニーズを発見するうえで、重要なことは「常識にとらわれない」ことだと著者はいいます。
著者が約20年前に「リアルゴールド」をガラス瓶からアルミ缶に変えて大成功を収めたのも、「健康飲料=ガラス瓶」という常識を疑ったから。
アップルのスティーブ・ジョブズも、専門職の道具だったパソコンを一般人の手に広げたiMacも、小さなコンピュータを手のひらに載せたiPhoneも、「そんなことはできない」と常識を盾に反論するエンジニアとの戦いがあったからこそ。
常識を乗り越えるには、肉体的にも精神的にも大きな苦痛をもたらす場合があります。しかし、最初の一歩を踏み出した人には、期待以上に大きな成果という輝かしい未来が待ち受けているものです。
(64ページ)
芸能プロダクションの社長になってプロデュースする
商品を、利益の生む道具ではなく、人として見る(擬人化する)ことで、より親身になって考えていくことができます。
(166ページ)
擬人化は「ペルソナ」の設定ともいいますが、通常は、商品やターゲットを「20代。有職者。女性」など平面的に擬人化するもの。
そうではなく、商品を徹底的に擬人化して、「擬人化した商品=ターゲット像」とし、小説として商品の動向を明確化するということだそうです。
そして、自分が芸能プロダクションの社長になったつもりで、「事務所にやってきたこの新人(商品)」を世間に売り出す、と考えること。
その子の個性を踏まえたうえで、どのような個性を武器とするのか、どのような手法でどのあたりのターゲットに売り込んでいけばいいのか、を考えるそうです。
全230ページにわたり、大ヒット商品を次々に生み出してきた「ヒットメーカー」が、ノウハウを余すところ無く披露している良書です。「ヒットの正体」を探りたい方は本書を手にとってご覧なられてください。
また、人間の購買動機について理解を深められたい方は、『マーケティング担当者必読!「購買意欲」が沸く瞬間の心の動きを知る』をご参考ください。
株式会社ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役。化粧品、医薬品、アルコール飲料などさまざまな業界でリーディングカンパニーのブランドコンサルティング、マーケティングに携わる。