LINE発祥のルーツはサムスン?スタンプのデザイン、技術も韓国製
LINEは日本発のサービスなのか、韓国発のサービスなのか、よくネット上で議論が起こる話です。『ヤバいLINE 日本人が知らない不都合』という書籍を参考に、今まで知り得なかった真実をまとめてみます。
著者:慎 武宏, 河 鐘基 (光文社)
ネットの寵児の現在を、韓国取材を元に解き明かすビジネス・ノンフィクション。
LINEのルーツはサムスンにあり!?
NAVER(LINE親会社)は、検索事業で国内75%以上のシェアを誇る韓国ナンバーワンIT企業である。設立者は現会長であるイ・ヘジン。サムスンSDSの社内ベンチャーから独立したイは、1999年6月にNAVERコムを設立し、検索サービス「NAVER」をスタートさせた。
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日本発のサービスと言われている「LINE」ですが、韓国のNAVERの100%子会社というのは有名な話。
そして、そのNAVERはもともとサムスングループの子会社からスタートした会社なんだそうです。ルーツを辿ると、実はLINEとサムスンに関係があったとは・・・。
LINEを企画した男「シン・ジュンホ」
シン氏がイ・ヘジンが会長や韓国NAVER本社に提案したのが、LINEというメッセンジャーサービスでした。シン氏をはじめとするNAVERジャパンの幹部たちは当時「NAVER既存のサービスでは、日本で成功するのは難しい。なんでもやってみよう」というコンセンサスで一致していたそうです
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そう語るのは、「元NAVER幹部」のA氏。
A氏によると、LINEを企画したシン・ジュンホという現LINE+代表は、NAVERが日本進出するにあたり、早くから日本事業を担当していたそうです。
しかし、韓国ではトップシェアをしめるNAVERの検索事業も日本では伸び悩む状況。そこで、最大の権力者であるNAVER創業者からLINEの企画と決裁を仰いだのが、このシン・ジュンホ氏。
日本のニュースで語られる「LINEが日本発のサービス」であるという議論は、これ以降の話なんだとか。日本で企画されたアイデアは決して真っ白なキャンパスから生まれた発想ではないと「元NAVER幹部」は言っています。
LINEは東日本大震災をきっかけに生まれた?
あの日(東日本大震災当日)、NAVER全体を牽引するイ・ヘジン会長も、日本に滞在していたそうです。会長は、日本でその惨状を直接体験し、非常に衝撃を受けたといいます。震災の時、韓国NAVER本社の人間はイ会長に連絡を取ることができず、安否確認さえできなかった。
イ会長はそのような経験をしたため、既存の通信手段以外の、人と人とを有機的に結びつけるメッセージツールが必要だという感覚を強く抱いたそうです。(154ページ)
東日本大震災は、NAVERの日本での検索事業が停滞し、新しいモバイルコミュニケーションツールの企画が進められていた時に起きたそうです。
震災はNAVER経営トップの意向と、NAVERジャパンの社員たちの意識に強い影響を与え、LINEは世に生まれるきっかけに。
そして、シン・ジュンホ氏が責任者となりプロジェクトが進み、わずか1ヶ月という短期間でLINEを開発。韓国のイ・ヘジン会長にNAVERジャパンが作ったサービスとして報告が上がり、6月に市場にリリースされたそうです。
LINEは韓国発のサービスであるという結論
これまで話してきたことを前提に考えるのであれば、LINEは韓国製のサービスと言わざるをえません。韓国のメッセンジャーアプリの歴史がなければ、LINEというアプリの発想は生まれなかったかもしれません。しかも、シン・ジュンホというプロジェクトリーダーは、韓国のNAVER本社から送られてきた人物です
NAVER元幹部A氏
LINEは、日本発のサービスなのか、韓国発のサービスなのか、ネット上でよく行われている議論のひとつ。この問いに関して、NAVER元幹部のA氏はさらに下記のように説明しています。
NAVERジャパンに出向していたのは、シン・ジュンホ氏だけではありません。デザイナー、エンジニア、企画者など多くの韓国人が日本のプロジェクトに参加していた。
そもそもLINEの核となる技術は大容量データを処理する技術です。そのような核心的な技術は類似のサービスを通じて韓国NAVERが培ってきたものです。そして、そのデータ処理技術の開発経験を持った韓国の高度技術者たちも、LINEのプロジェクトに参加していた。
つまり、NAVERジャパンの開発ノウハウは、NAVERジャパンだけのノウハウではなく、韓国NAVERが日本支社に投資し、移植した資産であるNAVER元幹部A氏
A氏によると、日本国内だけではなく、グローバルでのマーケティング戦略上、「日本発」のサービスということで売り出しているとのこと。日本国内でみると、LINEがリリースされてから「竹島問題」などで“嫌韓”の火が点き出した頃。グローバル戦略でも見ても、韓国より日本の方が「国家ブランド」が高いようです。
そのようなイメージ戦略、LINEスタンプ、キャラクターのブランドコントロールをしているのは、LINEプロジェクトリーダーであり、現LINE+社長のシン・ジュンホ氏なんだとか。
企画、決裁、資本注入元は韓国のNAVER本社ですが、実際に開発、運営し、ユーザーフォローをしているのは日本の現場です。もちろん、どちらにもプライドがあるのと、イメージ戦略の関係上でしょう。これを“日韓コラボレーション”と言える日が来るといいですね。
本書は、通読しているうちにどんどん内容に引き込まれていくリアルな取材が魅力的。新聞やニュースなどでは知り得なかった親会社と子会社の関係性、LINEの闇の部分を知りたい方はお勧めの良書です。